ゴーヤの気ままに映画

見たい作品がある時に書いているので定期更新ではありませんが大体月に2,3本は新作鑑賞して投稿しています!文章は苦手なので下手なのはご容赦ください。評価は甘口カレーくらいの甘さ( ^ω^ )

映画『ある男』あらすじ・感想・ちょっとネタバレ この“男”はどこの誰…

 

 今回鑑賞するのは結婚して幸せな家庭を築いた生涯の伴侶が実は全くの別人だったというヒューマンミステリー。亡くなった時にはじめて素性がまったくわからないことが判明し、彼の正体を探っていくという物語。

 

 他の人物と入れ替わったりする作品は実写やアニメ作品なんかでも割とある展開ですが中身をかなり捻ってくる作品が多い印象を持っています。

 

 それらの作品たちとは少し違って男の素性が明らかになるにつれ感動するような“何か”が秘められている今作(予告見た感じだと)。活字が苦手な私はもちろん?原作小説を読んだことないのでどんな物語になるのかが全然想像つかないんですよね。

 

 さっそくいってみよ〜〜〜٩( ᐛ )و

 

 

作品情報

 今作は第120回芥川龍之介賞『日蝕』(99)や平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞『決壊』(09)などを受賞した小説家・平野啓一郎氏の同名小説をもとに製作された作品。

 

 結婚した夫が亡くなった際に全くの別人だと判明し、彼の周囲の人たちが正体を探るべく動き出すヒューマンミステリー作品。

 

 別人として生活をおくっていた夫に『東京喰種 トーキョーグール』(17,19)や『ラジエーションハウス』(19,21)などに出演した窪田正孝、妻役に『万引き家族』(18)、『まんぷく』(18〜19)に出演した安藤サクラ。

 夫の正体を調べる依頼を受けた主役の弁護士役に『ウォーターボーイズ』(01)、『天地人』(09)、『悪人』(10)などの有名作品に出演し日本アカデミー賞などを受賞してきた妻夫木聡が出演する。

 

 他にも有名作品に出演する俳優陣を迎え物語を描いていく。

 

 男はなぜ身分を偽り生活していたのか?!その謎を紐解いた先にあるものとはなんなのか!?

 

 

あらすじ

愛したはずの夫は、まったくの“別人”でした―― 

 

 弁護士の城戸は、依頼者の里枝から、亡くなった夫「大祐」の身元調査という奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経て、子供を連れて故郷に戻り、やがて出会う「大祐」と再婚。

 

 新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日彼が不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる中、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が法要に訪れ、遺影を見ると「これ、大祐じゃないです」と衝撃の事実を告げる。

 

 愛したはずの夫は、名前もわからないまったくの別人だったのだ‥‥。

 

 「大祐」として生きた「ある男」は、いったい誰だったのか。「ある男」の正体を追い“真実”に近づくにつれて、いつしか城戸の心に別人として生きた男への複雑な思いが生まれていく―――。なぜその男は、別人として生きたのか。

 弁護士・城戸がその真実に辿り着いたとき、必ず涙するあなたの亡くなったご主人をXと呼ぶことにします。

 


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監督情報

 本作で監督を務めるのは石川慶氏。

 

 海外の大学で映画について学び短編映画などの制作でキャリアを積む。その後日本での映画制作を目指し短編作品をメインに活動し、2017年に『愚行録』で長編デビューを果たす。

 

 デビュー作で第73回ヴェネツィア国際映画祭にて選出され、新藤兼人賞銀賞、ヨコハマ映画祭、日本映画プロフェッショナル大賞では新人監督賞も受賞する。

 2019年に映画『蜂蜜と雷鳴』で毎日映画コンクール日本映画賞日本アカデミー賞優秀作品賞などを受賞したりと活躍されています。

 

 作品は得意なジャンルのみに絞るのではなくさまざまな要素のものを手がけており、今作の複雑な感情やミステリー要素などをどのように引き立ててくるのかが注目点になっていると思います!!

愚行録

愚行録

  • 妻夫木聡
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キャスト<俳優名

城戸章良<妻夫木聡

 弁護士。かつての依頼者である里枝より亡くなった夫の身元調査という奇妙な相談を受け、「ある男」の正体について調べる。

 

谷口里枝<安藤サクラ

 一度の離婚を経て、大祐と出会い再婚。幸せな家庭を築いたが、不慮の事故により大祐を亡くす。大祐の死後、大祐が別人として生きていたことを知る。

 

谷口大祐(Xさん)<窪田正孝

 別人である「谷口大祐」を名乗り生きていたが事故により命を落とす。なぜ別人として生きていたのか、その理由は謎に包まれている。

 

谷口恭一<眞島秀和

 「谷口大祐」の兄。1年の法要時に里枝の元を訪れる。遺影を見て「大祐」が自分の弟ではないと気づき里枝に告げる。本物の谷口大祐とは絶縁状態。

 

谷口大祐(本物)<仲野太賀

 本物の「谷口大祐」。どのような理由かはわからないがXさんに戸籍を渡した。兄の恭一とは絶縁状態。

 

城戸香織<真木よう子

 城戸の妻。

 

後藤美涼<清野菜名

 本物の「谷口大祐」の元恋人で彼の過去などを知る唯一の人物。

 

小見浦憲男<柄本明

 城戸が過去の事件について話を聞く相手。

 

※引用元:公式HPより

 

 

 

感想

 逃げたい過去から離れる方法が“これ”しか無かった…。ただその家庭に生まれただけなのに背負いたくないレッテルを自身の名前と共に剥ぎ取るが自分を見ると離れられない。だけど「過去」がどんなものでも愛した「事実」は変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「谷口大祐」として生きるのはなぜ…。

 仕事中の事故で愛する夫を失い悲しみが癒えない中発覚した“別人”である衝撃的な事実をさまざまな人との繋がりをたどり、その人の人生を見ていく今作。

 ただただ普通の家庭で生活することの「特別さ」や主人公の弁護士が自分の置かれている立場を見直すヒューマンドラマで、今も日本に残っているヘイト問題などを題材に描かれていました。

 

 ラストは「人間のいやらしさ」というか、多くを持っているにもかかわらず求める「人間らしさ」を出しこちらに問いかけるような脇腹を突かれるような感覚になりましたね。

 

 偽物の「谷口大祐」として生きていくことになった背景には今まで生きてきた経験の中にどうしても切り離したい過去があり、それを断ち切ることへの思いがあって偽りの戸籍を得ることにつながったのかなと。

 自分は何もしていないのに環境のせいで今後を狂わされる。物理的に離れても生活していく中でちょっとしたことがトリガーになって思い出す。

 

 本作は殺人を犯し死刑囚となった親が原因で生きていくのが辛くなってしまったXさんが他人の戸籍をもらうのがメインなんですが紐解いていくと戸籍を渡す人が他にもいるわけで。

 そんな柵があるのが弁護士の城戸もなんですよね。小見浦が初対面の1発目でいきなり彼の心の中にある闇の部分に触れるんですよね。ここに初手で突っ込んで来れるのはビックリですが、それが真実への道にもなり城戸自身の見直しにもなるっていうね(゚∀゚)

 

 私はありがたいことにそういった境遇にはなく、親も兄弟も健全に生きておりまして( ´∀`) でも彼らの主観に立って生活のことを考えればその選択をするのも頷ける。

 単純に“普通”になろうとしただけなんですよね。親がこうだから自分もこうみたいなことはないですし、親は親、子は子なわけですよ。

 

 ある程度離れれば思い出すことも辛くなくなるんでしょうけど、「谷口大祐」(Xさん)は自分の顔が父親そっくりだから鏡とか窓の反射でフラッシュバックするんですよね。親が犯罪者という部分だけじゃなくて事件現場も見ちゃっているっていうことも余計に重くのしかかってしまって。

 

 ただ今回の戸籍交換って法律で禁止されているからアレですが、「谷口大祐」と同じような環境にいる人ってどうやったら救われるんでしょうかね。

 国が手を差し伸べてくれるわけじゃないから違法でもやったわけですよね。この部分って「日本てどうなの?!国民のこと守ってくれるの?!」みたいなところに訴えかけていますよね。現実でもみんながどこかに感じている感情を作中に入れているから他人事として見れないとこもあります。

 

 考えさせられる…(゚ω゚)

 

 

主人公ってそっちなんだね…

 正直最初は窪田正孝が主人公かと思っていたんですよ。だって彼の役の過去を見ていくわけだし、予告もそれっぽい感じだなって思っていたので。

 

 HP見たら妻夫木聡が相関図の真ん中にいたんで「そっちなの!?」って思いましたww で劇場で鑑賞したら城戸弁護士もそういう境遇にあるのねって気づいて彼の持つ“在日”っていう部分がXさんと重なっていくんですよね。

 

 作品の最初と最後に「絵」が出てくるんですがこれが始めと終わりで全く違う映り方をするんですよね。はじめは何気ない絵だと思っていたけど城戸のこととかもわかってくるとすごい絵に変貌。 見る角度が変わるとこんなにまで変わるんですね…。

 

 小見浦の発言一つ一つが城戸の真の部分に突き刺さって。城戸自身も受け止めないといけない部分だとわかっているんだけど妻や義父義母の発言とか人間性とかで表に出せない。

 これはねぇ…。なんとも言えないですね(・Д・) 正直なんでも持ってる側の人間なんですよ。“在日”とかあれども結婚して子供いて仕事で稼いでいい家に住んで。これ以上に何を欲するっていうんだってくらい恵まれた環境にいるはずなのに「谷口大祐」と同じような満たされない穴を持っている。

 

 多分この穴を埋めることをできるものってないんじゃないかなって。吐口もないから抱え込む一方で最終的な到達点は結局“そこ”にたどり着く。お金持っていても救われないってね。

 

 

最後に

 ヒューマンドラマではありましたがミステリーの部分はそこまで深くは無かった印象です。ジャンルとしてはヒューマンミステリーなんでしょうがメインがヒューマンでミステリーはおまけなのかなと。

 

 まぁ人間って結局分かれるものですよね。一般人と犯罪者血縁とか日本人とそうでない在日とか。自分自身がそっち側じゃないということを形として残して安心をしたいんでしょう。

 そういう心理がカテゴリーで分類するような世の中になったのかなって。これって学生くらいの年齢からスタートしますよね。「陽キャ」と「隠キャ」みたいなのとかね。それを私たちに問いかける作品なんじゃないかって。

 

 そしてなぜ「谷口大祐」は林業に就いたのかってとこが、人間の成長と過去との決別を暗示させているんですよね。

 結局谷口は過去を断ち切ったけどそれに押し潰されてしまうっていう形で亡くなるわけです。でも里枝が谷口大祐じゃない〇〇さんだって知っても彼を愛し、結ばれ、家庭を築いたことは事実なわけです。

 

 城戸は今後「誰」に生きていくんでしょうかね。妻のアレをきっかけに断ち切る方へ足を踏み入れていきそうですがあそこで終わっちゃうのが憎いやり方ですよねw 伝えたいことは全部出ているから気持ち悪いわけではないですがまた始まるのかなって思っちゃいます(´ω`)

 

 ってなわけでまた次回 ´ω`)ノ

 評価 ☆☆☆☆★4/5