ゴーヤの気ままに映画

見たい作品がある時に書いているので定期更新ではありませんが大体月に2,3本は新作鑑賞して投稿しています!文章は苦手なので下手なのはご容赦ください。評価は甘口カレーくらいの甘さ( ^ω^ )

映画『怪物』あらすじ・感想・ちょっとネタバレ これは人間なのか

 

 昔も今も問題が多く残っている「教育現場」。最近のニュースでも教師が生徒に対して暴力を振るったりする事件があったりします。先生や学校側にフォーカスが向きやすいですが、実際はそちらだけでなく生徒や保護者サイドに問題があることが多い。

 そのきっかけとなったのも「モンスターペアレント」という言葉が生まれた2000年代ではないでしょうか。このような言葉が生まれるということはそれだけ深刻な出来事があったから。

 

 今やネットが普及し「生徒間のイジメ」だけかと思えば学校が助けてくれなかったり、知らないふりをしたりと実は大規模なものであったというものが出てきました。 イジメにあっている子を救おうとYouTubeなどで活動する大人がいるくらいです。

 

 今作は表目的には「子供同士のケンカ」という学校生活で起こりうる出来事かと思ったら主張が食い違ったり、周りを巻き込んで事態が深刻化していく様子を描いている。 それだけでは終わらずある日突然子供達が姿を消してしまうという多くの謎があるストーリーとなっています。

 

 同じ人間だけど実際は赤の他人なわけでお互いを100知ることなどできない。そんな相手との溝から「怪物」が生まれるというコンセプトで今回のカンヌ国際映画祭で受賞もした今作はどんなストーリーになっているのでしょうか!?

 

 さっそくいってみよ〜〜〜٩( ᐛ )و

 

 

作品情報・監督情報

 大きな湖のある町。学校で起きた子供同士のケンカをきっかけに周りを巻き込んでいき大事に。 息子を1人で育てるシングルマザー、生徒思いな教員、ケンカをした子供たちなどの視点から「怪物」とはなんなのかを紐解いていく。

 

 怪物の正体を求めた先に待っているものは?私たちは一体何を見るのか?

 

 この圧巻のヒューマンドラマを手がけるのは『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)、『万引き家族』(18)などで知られる是枝裕和監督。『万引き家族』は第71回カンヌ国際映画祭で最高賞の“パルム・ドール”を受賞。それだけでなく第91回アカデミー賞外国語映画賞やミュンヘン国際映画、バンクーバー国際映画、サンフランシスコ、フロリダなど多くの映画賞を受賞しました。

 

 昨年(2022)には監督初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』で第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品し、エキュメニカル審査員賞を受賞(゚∀゚)ナンダソノナマエ

 

 数多くの大ヒット作を作り上げてきた是枝監督の最新作がついに登場し、私たちの心を揺さぶる結末に乞うご期待!!( ^ω^ )

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あらすじ

 大きな湖のある郊外の町。

 息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。

 それは、よくある子供同士のケンカに見えた。

 

 しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―。


www.youtube.com

 

 

キャスト<俳優名

麦野早織<安藤サクラ

湊の母、シングルマザー

 

保利道敏<永山瑛太

湊、依里の担任教師

 

麦野湊<黒川想矢

小学5年生の早織の息子

 

星川依里<柊木陽太

小学5年生の清高の息子

 

鈴村広奈<高畑充希

保利の恋人

 

正田文昭<角田晃広

小学校の教頭

 

星川清高<中村獅童

依里の父

 

伏見真木子<田中裕子

小学校の校長

 

※引用元:公式HPより

 

 

感想

母親、教師、子供それぞれの目線で起こった問題を見ていく。亡くなった坂本さんの音楽がシーンとマッチして感情をより引き出す。誰しもどこかに“怪物”を飼っていて人によって見え隠れする(゚ω゚)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校で何が起こったのか

 冒頭、駅前の雑居ビルで大規模な火災が発生し消防車が駆けつける。周辺には多くの野次馬が現場を見て動画や写真に収める。

 シングルマザーの早織は消防車のサイレンを聞き2階のベランダへ。息子の湊と一緒にカジノ現場を見下ろす。

 

 家事を見ながら湊は「豚の脳を移植した人間は人間なのか?」と沙織に質問。突然の問いかけに驚いた早織はなぜそんなことを聞いたのかと問うと「学校で先生が話していた」と返す。

 

 早織は若くして亡くした夫に「湊が結婚して大人になるまでは頑張る」と誓い、クリーニング店で日々働いていた。湊の前では一切疲れた表情や弱音は見せない明るい性格。

 

 そんな親子の日常が少しずつ変わっていく。

 

 湊のスニーカが片方しかない。水筒の中に土が混ざっている。髪の毛が散乱した洗面所。いつの間にか怪我してガーゼに巻かれた耳。早織は息子の姿が変わってきていることに徐々に不安を抱いていく。

 

 それだけにとどまらず学校が終わっているのに帰宅せず、夜遅くまで外出。早織は湊の同級生にどこで見たか聞くと配線になった山の方に行ったとのこと。

 暗い山道を灯りを頼りに進むともう使われていないトンネルの中で湊を発見。車で帰宅している途中で突然シートベルトを外し、車外へ飛び出し病院で精密検査を受ける。

 

 車内でも検査の待ち時間中でも湊に「なぜあんなことをしたの?」と詰め寄ることはせず慎重に接するが湊は感情を爆発させる!

 

 僕の脳は豚の脳なんだ!!

 

 そんなことを発した湊に誰に言われたのか聞くと担任の保利先生に言われたと答える。湊は先生にそういった暴言や体罰を受け悩んでいたのだ。 我が子が学校でそんな目に遭っていることを知り、早織は単身学校へ向かう。

 

 学校を訪れた早織は校長に湊から聞いたことを説明。そこに現れたのは主任教師と湊が2年の時の担任が入室。 保利本人に事の顛末を聞きたかった早織は日をあらためることに。

 再び学校を訪れた早織はなぜこのようなことが起きたのかを聞こうとするが、校長、保利、主任たちは頭を下げ「今後このようなことが起きないよう指導する」と言うだけで一切会話をしない。

 

 あまりにひどい対応をとる教師たちに早織は「謝って欲しいわけじゃない。話をしたい。」と話すが教師一同頭を下げる一方。校長は機械のように同じことばかり話し、「今回のことをさっさと終わらせたい。」「とにかく謝って終わらせよう。」といった様子。

 

 早織の別の質問に対しては主任が持っているカンペを確認し早織の目すら見ない。目に正気を感じられない校長は孫を事故で亡くしたばかりだという。「孫を亡くした悲しみと同じものを今私も受けている。だからこそ話をしてほしい。」と早織は校長に言う。

 

 彼らは“人間”なのか?

 

 結局まともに話をする機会はなかったが数日後、学校で今回の件を謝罪する場が用意され生徒の保護者や地元紙に載るほどの騒動に発展。

 保利は謝罪の場で体罰を認め謝罪したが早織に「湊がクラスメイトにいじめをしている」と言い、保利が言った生徒の家を訪れることに。

 

 その生徒は星川依里。彼は早織を家にあげ学校を休んでいる湊宛に手紙を書き始める。家には彼の親はおらず家に上がっても大丈夫か不安になる早織。依里と話をしていると彼の腕に火傷の痕が。

 

 息子がやったのか!?

 と思ったが確証を得られず湊に問うことなく日常を過ごしていた。

 

 また別の日、学校で湊が階段から落ちたと連絡が入った。湊がいる部屋に通されたがそこには誰もいない。ベランダに続く扉が開けっぱなしになっており最悪の状況を想像したが誰もおらず、湊は主任の先生に連れられ「トイレに行っていた」と言い帰宅する。

 

 ニュースでは台風の予報が流れ、窓の外は強い風が吹いている。早織と湊はベランダに置いているものを屋内に入れ、窓には段ボールを貼り付け台風に備える。

 夜が明け外は風と雨の音が激しく聞こえる中早織は湊の部屋へ入るがベッドに湊がいない。トイレにでも行ったのか!?

 

 と考えるような間が空いたが外から「麦野!麦野!!」と保利の叫ぶ声が。早織は窓を開けて確認すると外からの風で机にあった絵の書かれた紙が散らばる。

 

 ここまでが早織から見た今までの視点。次は保利が見た今までの視点に映る。

 

 というストーリーの流れです。

 

 冒頭の火災から湊が失踪するまでを早織、保利、湊それぞれの視点で進行していきます。同じことが起きているのに視点が違うだけで出来事の感じ方や見え方、当事者たちの感情が全く違うのが構成として面白くこの作品のメイン部分になっています( ^ω^ )

 

 

結局“怪物”ってなんなんだ?!

 表向きに出ている情報全てが真実であるとは限らない。最初は“これ”が正しいと思っていても実は全く違っていたりする。ストーリーが進行するにつれて早織の視点で見えていたものが保利の視点で修正されたりと「見えるもの」と「真実」に相違が出てきます。

 

 真実と違っていたとしてもどれも個々が良しと判断している行動だったりします。早織は息子を守るために学校に事実確認しに赴くけど教師側からしたら「モンスターペアレント」認定されていたり。

 その温度差があるから「話をしたい」早織に対し学校は「早く終わらせる」平謝りしかしない。こんなことが当事者の知らないところで起こっていたらわかるわけないし、謝罪の態度にただただ腹立たしいだけ。

 

 最初早織の視点を見ているだけでは違和感だらけで「なぜそんな感じなんだ?」と思ってしまうところが多々。

 今作の完成自体がストーリーではなく3人の視点が合わさることで完成するようになっているから。ただ単に学校で騒動が起きて台風の日に子供が失踪するで終わりではないのです。

 

 早織のシーンで違和感があった箇所は保利や湊視点で、保利のシーンで違和感があるところは湊の視点で違和感の謎が見つかる。

 そうやって全ての違和感が取っ払われた時に今作『怪物』が完成するという頭のいい作られ方。めっちゃ手の込んだ一作に仕上がっていると感じますね(゚∀゚)

 

 作品名でもある「怪物」ですが、これは一体なんなのか。多分誰もが持っている一面である条件で顔を見せるものなのではないでしょうか。

 今回は登場人物たちそれぞれが自分や身内といった守る対象がいることがトリガーになって怪物が姿を見せる。

 

 早織は我が子である湊だったり、校長や主任なんかは学校を守る+自分自身、保利も自分を守るために身の潔白を示そうとする。メインのキャラクターだけでなく保利の彼女も記者が取材に来たタイミングで保身に走る。

 星川の母親は我が子の変わった面から逃げていますが父親は酒で誤魔化しながらでも保身をしている。まぁこの人の場合はネグレクト手前感はありますが、最終的に依里の祖父母に預ける形で自分を守ろうとします。

 

 このように自分の大切なものを守ろうとする行動が周りを貶めることになっているんだけど、真実部分が見えていないからなんの感情も湧いてこない。これって人間じゃなくて怪物なんじゃないでしょうか?

 早織視点から保利を見たら「暴力振るったし謝罪の意思も薄くあんな態度を取られた。地元紙に書かれた教職を辞めさせられても当然」みたいな感じなんでしょうが、保利が置かれている状況を知ればまだ考えが変わりそう。

 

 だけどそれを知るわけがないから彼に対して負の感情しか湧かない。物事を100知ることは無理でしょうが知らなければ誰しもがこういった怪物になってしまいかねないわけです。

 別にこれは大人だからなるとかではなくて子供でも同じ。保利に対してウソの発言をして教職を辞めたり彼女と距離を置くようになる結果になっているわけですから。

 

 ではなぜあんな嘘を子供達はついたんだろう?って疑問に思いますよね。これも彼らが自分を守るためにとった行動じゃないでしょうか。

 大人になれば「ついて良い嘘と悪い嘘」があるみたいなことを知りますが、子供の頃って「嘘はついちゃいけない。嘘をつけばみんなから嘘つき呼ばわりされちゃう。」みたいな感情があるのではないかと。

 

 だからたまたま肘が当たったけどあたかも殴られたみたいに言ったり、猫を殺していたみたいなことを言ったり。そんなことを言っておいていざ証言してくれとか言われると嘘が多数に広がってしまうから「そんなこと言ってない」なんてことを言っちゃうんじゃないかな。

 

 これやっていることって表面的にはそんなにな感じですが過程を知った上で見るとえげつないんですよね!!子供とはいえ1人の人生を十分に壊すことのできる力を持っていて本人の思っている以上の攻撃力を持っている。

 あのシーンで保利先生が命を絶っていたら学校+生徒たちが殺したってことになりますからね。1人が小さくても数がいれば凶器になる。知らず知らずのうちに怪物を飼っているもしくは自分自身が怪物になっているのかもしれません…。

 

 

最後に

 予告見た時点では「学校問題」ってのはわかっていたのでどんな作品になるんだろ?重めではありそうだな。とは思っていましたがめちゃくちゃ重めではありましたね。

 

 序盤は謎が多くて「あっ、これがわかってきて全体が見えてくる感じね!?」とか思っていたけど最後の湊・依里視点で一気に変わる。

 全部ちゃんと解明されるわけじゃなくて直接の関係はない細かいところはそのまま残されていて本のみ知るで終わるんですが、これも逆に味が出てきていい。ここまで解明されるとその人の全てがわかるんですが、そうはさせないからその人の本質がわからず良い人なのかも不明ってのが個人的には好きです。

 

 だって他人を100%知ることなんて出来ないしね。保利がガールズバーに行っていたのか?とか本当は依里の父親だったんじゃないか?

 校長の孫が亡くなった真相もわからないですよね。収容されているのは校長ではなく夫だけどどこかの噂で校長本人なんじゃないかって。お墓は別で用意するってのはどっちが事故を起こしてもあり得ることだし、そういった真相は分からずじまいです。

 

 こういった細かいですが謎を残していることで見終わっても考えられるのが余韻を楽しむのにもつながっていいですね。

 

 私的には俳優それぞれの置かれている状況で表情がめちゃくちゃ感情こもっていていい演技されていると感じましたし、湊と依里を演じた子役2人もうまかった。 学校で起こった問題から生まれ変わるという方向にチェンジしていくってのもすごいしね。

 

 やっぱ小学校高学年って心も体も変化していく年頃でああいう普通のことなんだけど本人たちからしたら突然訪れたイレギュラーなわけです。

 あれだけの騒動も体験してしまったから新しく生まれ変わろうとする姿も子供ながらに一生懸命考えてのことだったんでしょう。特に湊にとって父親の存在が大きく父のようになろうとしていたんでしょうね。

 

 最後は生まれ変われたのかな…。台風が去り倒れた電車から這い出た2人はおそらくね…。 フェンスで入れなかった橋に向かって走り出すとに光が差しフェンスが無くなっているという事は彼らは生まれ変わりに行ったのでしょう。

 まぁこれは私個人の解釈なんですが、早織と保利の目線では車内の様子が見えなかったので結論が出ずでこういった予想にしました。

 

 1人で解決するよりも多くの語れるところがあるので誰かと共有するとさらにいい味の出る作品になっていますね!!

 

 ってなわけでまた次回 ´ω`)ノアリャシタ

 評価 ☆☆☆☆★4/5