
学生時代にできた友達と大人になってからできた友達だと距離感や感覚なんかも少し変わってくる。
とくに仕事が起因でビジネスパートナーとして続いている関係なんかはちょっとした時代の変化で180°反転したりする。
今作は実際に存在した作曲家と作詞家の元コンビのお話。昔ビジネスパートナーとして成功を収めた2人だが片方は別のパートナーと組み成功し満たされている、もう片方は成功を収めるもどこか満たされない空間がある表裏一体の姿を描く。
描かれる一夜は2人の文通をもとにイメージされているそう。
バーという限られた空間でどんなヒューマンドラマが繰り広げられるのか気になりますね!主人公は何を感じ何を思い、この一夜を過ごすのか…
さっそくいってみよ〜〜〜٩( ᐛ )و
作品情報
1930〜40年代にかけて実在した伝説的ブロードウェイ作詞家であるロレンツ・ハートの孤独、可や苦悩、恋愛模様を描いたフィクション伝記映画。
かつてハートと共に数々の曲を世に放ったパートナー:リチャード・ロジャースが新たに手を組んだ作品『オクラホマ!』が発表され大ヒットを収める。
作品初演のパーティーに招待されたハート。元パートナーとの再会する一夜で彼は何を見つけるのか…
主人公のロレンツ・ハートを演じるのは『ハムレット』(00)や『ブラック・フォン』(21〜25)などに出演し、今作の監督リチャード・リンクレイターと長年タッグを組んできたイーサン・ホーク。
他にはロジャース役を『007 スペクター』(15)、『アリス・イン・ワンダーランド』(16)のアンドリュー・スコット、ハートの想い人エリザベス役を『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)のマーガレット・クアリー、ハートの親友エディをボビー・カナヴェイルなどが演じる。
誰かの1日や人間ドラマを描くことの多いリチャード・リンクレイター監督の最新作。親友の成功を祝う一夜に友の成功、自身との対比、想い人への恋心が交錯しハートは何を思うのか…。
あらすじ
作曲家・リチャード・ロジャースが、長年タッグを組んでいた作詞家・ロレンツ・ハートに代わる新たな相棒と組んだ初めてのミュージカル、『オクラホマ!』の初演の夜、1943年3月31日。
ブロードウェイのレストラン「サーディーズ」で行われたパーティに招待されていた。伝説の作詞家と評されるハートが過ごすパーティでの一夜。夜が明ける頃、彼が見つけたものは、何だったのか。
※引用元:FashionPressより
感想
童心のまま大人になった男が“友情”を美しく終了し大人になる。輝かしい過去にしがみつくのは悪くないが時代の移り変わりに適用するためには手放したり変えないといけないものもある。それと向き合い考える夜が今夜だった(´ω`)
都合のいいファンタジーな展開がないリアルさ
ブロードウェイの伝説にまで上り詰めた作詞家のロレンツ・ハートだが、ここ最近は今までのスタイルが聴衆に刺さりにくくなり苦戦を強いれている状況。
そんな中、かつてタッグを組んでいたロジャースの新作『オクラホマ!』の初夜公開記念パーティに呼ばれ、更なる成功を収めた旧友と自身の差を噛み締めながらあらゆる変化を体感することになる一夜を描く作品となっていました(´ω`)シンミリ
今作は主人公のハートがほぼ喋りっぱなりの会話劇がメインとなっており、何か素敵なドラマやサスペンスなどは発生しない“リアルさ”を前面に出しています。
もともと『オクラホマ!』の楽曲を手がけたロジャースはハートと共にまたヒット作を生み出したいと考えていましたが、ハート自身はそれを拒否。ハートの心情としては今までやってきたミュージカルコメディの笑いで観客を楽しませたいと考えていたが、『オクラホマ!』がそれとは違った作風だったからやりたくないと考える。
ただ時代は第二次世界大戦が激しさを増しており、バーでピアノを演奏していた青年も約2週間後には戦地に赴くと発言するシーンもあります。
そういった状況で疲弊している国民に20世紀初頭の郷土愛や地域の成長といったコンセプトが愛国心を高める時代のムードだったり考え方とマッチしたことからヒットを記録したと感じられます。
それまではアメリカンジョークのような皮肉っぽい会話で笑いを誘うことが多かったようですが、戦争中に見るものに対して「それじゃない感」を少なからず感じていた人も多かったのかもしれないですね(´・ω・`)
そういった民衆の気持ちを汲み取ることができたロジャースはハートとは違う別のパートナーと成功を収めたわけですから、今までのミュージカルをやりたかったハートとしては釈然としない様子。
そんな気持ちで参加したパーティーでそれではダメだと諭されてしまうわけです。おそらくハート自身も心のどこかで感じてはいたでしょう。でも彼自身がそれをすんなり飲み込むことができないし、自分の栄光を「過去」のものとは認めたくもない。
現実でも新しい時代に取り残されてしまう人も多いかなと。確かにその時に築き上げた功績はすごいものではあるんだけど、それよりも大事な「今」では通用しないこともあるから。
その「今」をなかなか飲み込めないハートの相手をする周りがかなり大人な対応をずっとしてるのも心がキュッてなる。ハート自身が過去に縛られて大人になれていないというか進歩に逆らおうとしているというか…。
ところどころでロジャースが「君のそういうところが」と直接言うもののそれにも抗おうとする。こういうシーンが散りばめられているからこそハートの成長が止まっているのを感じられます。
でも成長は止まっているんだけど時間が一緒に待ってくれるわけではありません。彼は歳をとり40代後半に差し掛かっている状況。それにも関わらず対策を講じようとせず20歳の大学生に恋焦がれワンチャンいけると感じてしまっているのも「大人になれていない」と思わせる要因。
彼の才能に対してはみんな尊敬はしているんですよ。こんなハートとまた仕事をしたいとロジャースは言ってくれているので。
真の友人じゃないと見限ってしまう人も多いはずですからね。時間は守らないし女性や酒にはだらしなく仕事にも持ち込んで来るくらいなので見ているこっちからしたら「なぜ関係を続けている!?」と思うほど。
そんなハートが何かをきっかけに変わることができるとロジャースは思ってたのかもしれないです。この一夜はハートにとってもロジャースにとっても人生の後半を左右する出来事だったんでしょう。
「自分」と向き合うことの重要性
上記でも記載しましたが現実でも過去の功績などに縛られている人が結構いる印象。個人的には“学歴”とか元〇〇なんかもそれに分類できるのかなと。
それ自体を否定するつもりはないんです。東大に入るとか総理大臣になったとかって誰にでもできることではないし、何かしらの努力で築き上げられるものではあると思うので。
ただそれを周りに振り撒いて「今」は何もしてない or できていないだったり、立場を殻に中身が全然なかったりと言ったものはザラにあると感じます。
その人自身への尊敬の念はあるものの進化を続けなかったり今の自分自身を見つめず昔のままだと思っている人も正直言うとイタい…(´ω`) 気付いてないだけで私にも私にもそういったところがあったら恥ずかしいww
普段の何処かで自分を見つめ直す習慣とか機会があればいいですが、なかなか全員がそう言う機会があるわけでもない。
誰かが注意してくれたりしたらいいけど年齢を重ねれば言いにくくなるのもわかるから今作も周りの人はさりげなく会話の中に盛り込んで来るから気付いた時により心を抉ってくるんです。
作品のテイスト的にも感情を爆発させて喧嘩をするようなシーンはありませんし、めっちゃストレートに突きつけられることもないいからホント静かに抉る感覚。「大人を泣かせる」やり方ですよね…。
とはいえ成功を経験しているからこそ自身の今後に対して不安を感じるのも必然。かつてのパートナーは自分と違って成功を収めているのでそれを見ると余計にいろんな感情が蠢いてしまうもの。
親友に優しいメッセージを送りたいんだけど「あんなミュージカルクソだろ!?」とかつてのスタンスを大事にしたい気持ちがぶつかり合う。逆にあの場で全部曝け出していろんな人との会話で声を聞いたりしたからこそその後の続作でいいものが出せたのかもしれないですね( ^ω^ )
最後に
イーサン・ホークが愚痴やら自身の考え方を絶え間なく吐き続けながら、表情や話の奥深くが地味にこっちにも刺さってくる作品でした。
だけど終始明るい印象のピアノが流れているから気分がめっちゃ落ちることなく刺さってくるからすごい不思議な感覚でリラックスしながら鑑賞することができましたw
結局自分の人生なんだから周りは“エキストラ”だというスタンスは一部確かにと感じます。でもハート自身がそう感じているように周りの人にとってもハートは人生の中に登場してくる一部の人でしかないんです。
自分自身が成功を収め特別な存在だと思っていたらエリザベスはすんなりロジャースの方へ行ってしまいましたし( ;∀;)
恋愛感情も流石に年齢的にそういうのを抱えるのも大人なら一歩ひきますよね。そんなこともなく酒や女、仕事にルーズなことが日に日にハートの人としての価値を下げてしまったのでしょう。
ハートの名曲『ブルームーン』の歌詞をもとに彼自身を描きながら功績への尊敬を込めた作品だったのではないでしょうか?
自身のこれまでの功績に対するプライドと人としての弱さをリアルに再現されており、何かを変えるきっかけにしたい人なんかにいい一作ではないかと。
ってなわけでまた次回 ´ω`)ノアリャシタ
評価 ☆☆☆☆★4/5

