ゴーヤの気ままに映画

見たい作品がある時に書いているので定期更新ではありませんが大体月に2,3本は新作鑑賞して投稿しています!文章は苦手なので下手なのはご容赦ください。評価は甘口カレーくらいの甘さ( ^ω^ )

映画『ロストケア』あらすじ・感想・ちょっとネタバレ どちらが「正義」か…

 

 現代の社会問題の1つでもある「介護」。少子化が進行し深刻な状況にある今の日本ではさまざまな分野で働き手が足りない状況になっています。

 「人生100年時代」と言われているくらい医学の発展がすごい中、この介護に関してはそれに追いつくことができていない状態。長く生きる可能性が高くなった時代だからこそみなさんにも当てはまる可能性の高い事象でしょう。

 

 今回紹介する作品は介護をメインに置いたサスペンス作品です。介護をする側にいる人間がなぜ介護者を殺害するに至ったのかを追求していく内容になっていますがこの感触は個人的に『死刑にいたる病』に近いものを感じます(゚∀゚)

 

 予告にある「衝撃の真実 心震えるラスト15分」がかなり気になりますね!原作が小説なんですが小説のサスペンス作品ってすごく作り込まれている印象がありますし、原作は日本ミステリー大賞で受賞歴のある作品であるため期待しております!!

 

 主演の松山ケンイチはかなり久々に見るかな。いろんな顔ができる俳優さんだから結構好きです!なんの作品か忘れてしまいましたが役作りのために体重をかなり変えたってニュースやってるくらい芝居に対して熱心な方のイメージがありますね。

 

 今作では犯罪者役をどんな顔でこなしてくれるんでしょうか!?そして初共演の長澤まさみとの絡みも気になる!!

 

 さっそくいってみよ〜〜〜٩( ᐛ )و

 

 

作品情報

 2013年に光文社から刊行されたサスペンス小説『ロスト・ケア』(著:葉真中顕)を原作に、『こんな夜更けにバナナかよ』(18)や『そしてバトンは渡された』(21)を手がけた前田哲監督の手で映画化。

 

 原作小説は第16回(2012年度)日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、1人の介護士が計42人の要介護者を殺害した大量殺人事件の中身を深掘りしていく作品となっていて容疑者と事件を担当している検事の「正義」の形について描かれる。

 

 主演には映画『デスノート』シリーズ(6,8,16)や『GANTZ』シリーズ(11)の松山ケンイチと『マスカレード』シリーズ(19,21)、『コンフィデンスマン』シリーズ(18~22)の長澤まさみが務める。

 

 年々高齢化が進む現代でも問題になっている“介護”についてを題材に取り込み、なぜ介護をしている人物がケアをしていた相手を殺めたのか。またその行為をなぜ「救い」とするのか。

 

 1人の殺人鬼の中心としたさまざまな考えが混ざり合うミステリー作品です。

 

 

 

あらすじ

 早朝の民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見された。捜査線上に浮かんだのは、センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)。

 だが、彼は介護家族に慕われる献身的な介護士だった。検事の大友秀美(長澤まさみ)は、斯波が勤めるその訪問介護センターが世話している老人の死亡率が異常に高く、彼が働き始めてからの自宅での死者が40人を超えることを突き止めた。

 

 真実を明らかにするため、斯波と対峙する大友。すると斯波は、自分がしたことは『殺人』ではなく、『救い』だと主張した。その告白に戸惑う大友。彼は何故多くの老人を殺めたのか?そして彼が言う『救い』の真意とは何なのか?

 

 被害者の家族を調査するうちに、社会的なサポートでは賄いきれない、介護家族の厳しい現実を知る大友。そして彼女は、法の正義のもと斯波の信念と向き合っていく。


www.youtube.com

※引用元:公式HPより

 

監督情報

 今作の監督を務めるのは前田哲。

 

 今回紹介している『ロストケア』が介護についての作品になりますが少し前にその前段階になるような作品も手掛けています。 それが『老後の資金が足りません』(21)です。

 天海祐希さんが主役をした作品でしたが同年に公開された『そしてバトンは渡された』(21)の方が印象強く残っているかなと思われます。

 

 そういった社会派の作品がここ最近目立っている監督さんかなと私は感じています。

 

 そのほかにも『陽気なギャングが地球を回す』(06)、『ブタがいた教室』(08)、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)などが有名どころ。

 

 そんな数々の社会派映画を手がけてこられた監督が今回挑戦するのが『介護』なわけですが、内容的にはかなりディープな部分となっており正直見たくないようなシーンも出てくるかなと。

 それをどう見せてくるのかも気になる作品になっております!(゚∀゚)

 

 

 

感想

 多くの国民が抱えている問題を正面から映し誰も救ってはくれない悲しみを描いた作品。援助を受けようにも立ちはだかる壁に押しつぶされそうになる“介護”と共に生活する人たちを「救う」介護士の正義は確かに納得できる部分もある。ただ個人的にはもっとこっち側(現実)の“穴”を突くような仕上がりにして欲しかった( ´Д`)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

社会の“安全地帯”に立つ者と“穴”で支える者

 1人で生活することができない老人を介護する介護士が42人もの老人たちをするという事件をもとに描かれ、「殺した」のではなく「救った」と主張する容疑者と「救った」のではなく「殺した」と言う検事がぶつかる作品。

 法の元では圧倒的に容疑者が悪いのだが実際容疑者に「救われた」人物と検事が会うことで彼の言っていることに揺らぐ姿は検事自身の親にも重なる姿があるのを見せており苦しむ内容になっていました。

 

 こういった社会問題になっている作品って見る時に結構勇気がいると思っていて、それこそヘビーな内容になっているからなわけです。

 思っていたとおり実際にある光景を演じていたし、介護という環境いた私自身も作品と重ねてしまうシーンがあるくらい。

 

 私自身は全て家族で行なっていたわけではなくデイケアなどを利用していたので仕事と介護がある程度両立できていました。

 しかし今作はそれよりももっと過酷な状況下を描いておりまじまじと鑑賞するのは胸が痛いほど。

 

 認知症によって行動がおかしくなっていく親を介護している子は皆心身共にボロボロに。主人公:斯波の髪が若い見た目に反し多いのもその背景があるから。中には自身で子育てをしながら親の介護をし仕事をするといった日々を過ごす人も。

 

 介護が必要な人が多いので毎日来てくれるわけじゃなく予約を早い者勝ちでするしかない。そこはピックアップしてかかれているわけではないですが、介護センターで電話予約をしているシーンで表す。

 

 ただ介護者自身も1人の人間なわけだしボランティアではない。それぞれに生活があるわけです。

 

 それでも真摯になって介護をする斯波。同じ職場の猪口(演:峯村リエ)の推測通り苦労してきた過去を持っている。その過去が今回の事件のきっかけとなる内容なんですが一番辛いこと。

 

 表面を見ると42人もの老人を殺したサイコパスなわけで誰もが「こいつヤバい!」と思うんですが、聴取で明らかになっていく彼の同期を聞くとぶっちゃけ一理あると思えちゃうし案外きちんとしている人物。

 

 彼も元々は父親を介護していて苦しみを経験した1人。ただ1人の肉親である父親と古いアパートで生活していたが父はもともと患った病気の副作用もあり手が離せない。自分が働いていたがついに仕事できる状況じゃなくなり、生活保護を受けようとするが「斯波が働ける状態」という理由でNG。

 しまいにはこんな体になって生活していることが苦しいから殺してくれと父親に懇願される。

 

 こんな「人」が生活しているとは思えない状況にいる自身を「社会の穴に落ちた」と言う。この時は精神的におかしくなってしまうしどう頑張ろうが“穴”から抜け出せない。

 

 もうこれ以上どう頑張れっていうんだ……。

 

 ここまでになってしまうかは「介護」をしたことがある人だったらわかるかなと。その経験がない人でも彼の白髪の量でわかるようにしていますし、事件を調べているときに出てくる斯波の年表でわかるようになっています。

 

 計算したら父親の介護していたのって26歳から30手前くらいだと思われます。その年齢で1人の大人を介護して仕事して、仕事できなくなったらお金がなくなり続け1日に3食食べることもできない生活になってしまうって想像したらあそこまでになっちゃいますよね。

 

 こんな苦労をしてきた彼とは真逆にいるのが検事の大友(演:長澤まさみ)。彼女も母親が要介護になっているんですが母親自身が老人ホームに入居しており彼女は月に1回面会に行くような状態。

 

 毎日仕事もこなし忙しい日々を過ごしているわけですが、斯波の事件を担当することに。彼の事件を上司の命令で早急に片付けようとしますが蓋をあけると大量殺人事件だったとなり斯波から動機などを聞いていきます。

 

 聞いていくについれて彼女自身が思っている法の正義がゆらいじゃうんですよ。というのも彼女が見ている母親の姿が斯波が事件を起こした動機と日に日に重なっていくから。

 母親は見た目こそ元気なものの車いすが必要で認知も入ってき始めている。同じ会話が繰り返されるのを苦い顔で対話する姿が。

 

 おなじ「介護」をしている人間でも見ている世界が全く違う。斯波が言う「安全地帯」にいると彼女自身気づいていくわけです。そこを突かれて聴取時に涙を流してしまうことも。

 

 しかも作品冒頭シーンで1人の遺体が発見された部屋に大友が足を運ぶんですが、ここのシーンてっきり斯波の殺害現場かと思ったら彼女の実父だったんです。幼い頃に両親が離婚し20年以上も会っていなかった父がいわゆる孤独死をしてしまう。

 

 実際に殺人をした斯波を法で裁いた大友も実は父を間接的に殺してしまっていた。父が亡くなる少し前に連絡が来ていたが何かと理由をつけて無視し母親に父の死を告げることもできない。

 彼女自身が父親を殺した斯波と自分を重ねていたわけです。面会部屋で映る2人は重なっていましたし監督自身この写し方で「2人が重なっている」のを表現していました(おそらく)(´ω`)

 

 この両極にいる2人は最終的にほとんど変わらない場所にいたわけです。

 

 

皆が救われたわけではない

 これだけ多くの人を殺してその行為を「救い」と言う斯波。実際に救われたという被害者遺族もいるわけです。

 だけど人を殺しているのでほぼほぼは救われたわけではないのではないか…!?最後法廷で梅田美絵(演:戸田菜穂)だったと思いますが「人殺し!!」と叫んでいました。

 

 ほとんどの場合はこういう感情を持つものでしょう。

 

 しかし羽村洋子(演:坂井真紀)のように救われる人もいる。あらゆる方向から挟まれて逃げ場がなく日に日に窶れていく。自身の時間はなく何のために生活しているのかわからないような状態。けど助けてくれる人はいない。

 

 そんな姿が斯波自身と重なりこの犯行をしていったわけです。確かにほかに救ってくれる人がいればこんなことしなくてもよかったんでしょう。

 この表現の仕方って今の国に対してめちゃくちゃストレートに投げかけていると個人的には思います。

 

 やっぱり金銭的に余裕があったり老人ホームの枠が空いていたりしないと入れないわけですからね。

 今の日本って始まりと終わりの2箇所でこの問題が起こっているわけです。生まれてから保育園などに預けられない「始まり」と介護が必要だけど老人ホームに入れない「終わり」。

 

 言い方的によろしくないとは思いますが極端なことを言ってしまえばこういうことなのかなって。

 

 老人ホームに入ったからって全て救われるわけでもないんですよね。大友サイドでは母親に寂しい思いをさせているんじゃないかって不安を大友自身に植え付けているし、母親が会うたびに変わっていってしまう姿を見る。

 

 この問題って表面だけでどうにかなるようなことではないっていうのもしっかりと書かれていたのでそこはすごいなって純粋に思いました。

 

 

最後に

 いやぁ、かなり深くまで抉ってきてましたね( ゚д゚) 去年見た『百花』も認知症を題材にした作品でしたがこれはそのもっと先でした。 実際『百花』は母親を施設に入れていますからそれができなかったルートの1つが今作って感じですかね!?

 

 ただバレなかったから法を破って自身の「正義」を遂行していいわけではありませんからね。追い込まれた人間って縋って助けられたものに正義を見出してしまうものです。

 言ってみれば某宗教団体とかもこの系統の一種なわけでそこにいる人は何かしらの救いを受けてそれが自身の正義に変わったんですよね。

 

 

 とはいえこういった社会問題を題材にした作品はもっと多くの方に見ていただき考えていかなければならないと思います。 現在は大人が介護するというわけではないですし、ヤングケアラーといった言葉も出てきているくらいケアをする年齢の層が広くなっているわけです。

 

 ただの映画として終わらせるのではなくこういった社会で起きていることを受け止めてどう対策をしていくのか。そのために国がどう動くべきなのかをしっかりと考えて次の世代へバトンを渡さないといけないなと。

 

 自身の親が高齢になれば必ずといっていい確率で訪れるわけですからね。まぁ今は元気でいてもらいことと離れて暮らしている方は少しでも一緒にいられる時間を作ってあげましょう( ^ω^ )

 

 ってなわけでまた次回 ´ω`)ノアリャシタ

 評価 ☆☆☆☆★4/5