たくさんの人々が生活を共にしているこの世界では毎年何かしらの事件や事故が起きています。日本でも年月が経っても語り継がれる大きな事件なんかもありますよね。毎年その事件が起きた日になったら追悼のニュースや振り返るなんかも報道されたりしています。
そういう事件は日本だけでなく世界でも起きているわけで、その1つをもとに制作されたのがこの『ガール・ウィズ・ニードル』という作品。
当時の時代背景や国民の生活状況から来る苦悩をどのように描いているのかに注目が集まっており、たくさんの映画祭にノミネートされてます。数々の映画監督や俳優陣が賞賛の声をあげておりどんなゴシックホラー作品に仕上がっているのかが楽しみです( ^ω^ )
世界大戦後の暗黒時代にどのような事件が巻き起こり人々を震撼させたのか?時代が時代ですから犯人を見つけるのも一苦労だったでしょうし、どのような形で収束していくのかも気になるところ…。
監督や俳優陣は存じ上げないですが予告でかなり引き込まれたので見るのが楽しみです!通常のホラーとはまた違った味のホラーはどんな感じだろ(゚ω゚)
さっそくいってみよ〜〜〜٩( ᐛ )و
作品情報
第一次世界大戦後のデンマーク、コペンハーゲンを舞台にした作品で、戦後の貧困で多くの人が苦しみなんとか生活している状態。そんな情勢でも手を差し伸べてくれる人はいるものだが…。という人間の闇と光の両面を描きます。
北欧史上最も物議を醸した連続殺人事件をもとに、当時の国民生活を白黒の陰鬱な世界観で表現する。労働する人たちの中でも身分の差があり少しの不都合で足切りされてしまうような“ひどい世の中”だけど光が差し込んでくる時はあるのか…。
主人公をデンマーク出身の女優でデンマーク・アカデミー賞を受賞した経験を持つヴィクトーリア・カーメン・ソネが担当。
他には『未来を生きる君たちへ』(10)、『愛さえあれば』(12)のトリーネ・デュアホルム、ドラマシリーズ『Fredløs』のべシーア・セシーリ、『The Blue Orchid』(20)や『Tove's Room』(23)のヨアキム・フェルストロプなどが出演する。
デンマークの俳優陣の演技を見ることがないので個々の期待度は未知数ですが、心理的恐怖心を煽ってくるような音響や映像技術が楽しみな作品かなと( ´∀`) 今では「幸せの国」と言われているデンマークですから、そんないい国がどんな暗黒時代を経て現代を作り上げているのか?普通のミステリーとも違うものが登場したことでまた映画の楽しみ方が変わりますね!
あらすじ
第一次世界大戦後のコペンハーゲン。お針子として働くカロリーネは、アパートの家賃が支払えずに困窮していた。
やがて勤め先の工場長と恋に落ちるも、身分違いの関係は実らず、彼女は捨てられた挙句に失業してしまう。
すでに妊娠していた彼女は、もぐりの養子縁組斡旋所を経営し、望まれない子どもたちの里親探しを支援する女性ダウマと出会う。
他に頼れる場所がないカロリーネは乳母の役割を引き受け、二人の間には強い絆が生まれていくが、やがて彼女は知らず知らずのうちに入り込んでしまった悪夢のような真実に直面することになる。
※引用元:公式HPより
感想
時代背景と撮影技法、静寂が混ざった面白い構成なんだけど内容はかなり悲しい…。予告を見た限りだとカロリーネが犯人なのかと思ってたがそういう構図になっていたのか!と思わせるストーリー。全部が裏目っているけど幸せになってほしい(´ω`)
人生はいつも“選択”
舞台は第一次世界大戦が勃発している時代のコペンハーゲン。男性は戦地に駆り出され、女性は国内で戦争に必要な製品を生産する職につき、いつまでこの生活が続くのかと日々を過ごす。
主人公のカロリーナは縫製会社で服を作る仕事をしていたが彼女の人生が少しずつ変わる出来事と出会いに遭遇していく…。
冒頭では彼女が家賃を払えず追い出されてしまうことから始まり、次に住むことになった家は中はボロボロで雨漏りはしているし水道も整備されていなくて中庭に水を汲みに行かなければならない環境。
戦地へ行った夫宛に1年前に手紙を出したが音沙汰がないためもう亡くなってしまったと思い、いわゆる保護費を貰おうとするが夫の死亡証明ができなければ受け取ることができないという。
最後に希望も断たれてしまったが自分の務める縫製会社の社長で男爵家の息子と関係を持ちめでたく懐妊します。これで人生逆転だぜ!新しい夫と子供を育てながらお金に困らない生活をできる!会社で仲の良い同僚には家政婦長としてきてもらおう!と夢見ながら過ごしていたところ、まさかの夫が生きて帰ってきた!
だけど彼は戦争で大怪我を負い顔の一部を欠損。カロリーナは音沙汰がなかったため「他に相手がいる」と説得して距離を置くことを選択します。新しい相手は金持ちだしね♪
夫の存在がわかったため早く結婚しようと決意し、社長に求婚を求めます。彼は申し出を承諾して2人は晴れて結ばれることに!
そうと決まれば義母となる彼の母親へ挨拶しに。彼の家を訪問したらさっそく「女同士で話がしたい」と言われ応接間へ通された。
あれっ!?女同士の話というのに1人の男性が。誰かと思っているとお医者さんのようで義母はカロリーナの懐妊が本当なのか確認するために診察を依頼していたのだ。数分ほど触診を受けた結果、本当に子供を授かっており結構大きくなっているよう。
それを聞いた義母は「始末できないの?」と穏やかではない会話をしている。おっと、雲行きが怪しいぞ(゚ω゚) 要は爵位持ちの家に平民が転がり込んでくるのが許せない様子。
お義母さんは診察後に息子を呼び「うちの外でなら好きにするといいわ」と選択を迫ると彼は「いっときの過ちだった」とカロリーナとの結婚を取り消し、彼女を縫製工場から解雇したのです!(´・ω・`)ナンテコッタ…
この時代は身分格差がまだあり、上流階級の人たちは戦争へいくのを免除されたりしていましたからね。こういう時代背景があったからこそ国民が疲弊していったんだろうなと。
そういうのを知らない主人公ではないと思うんですが、彼を愛することで盲目になっていたのでしょう。 格差社会でこうなる可能性があったにも関わらず選択したけど失敗してしまいます。
突然職を失い、夫となる彼とも別れた彼女は子供を産まずに始末しようと計画します。
大衆浴場に大きな裁縫針を持ち込み浴槽の中で自身の女性器に差し込みます!(゚ω゚)ヒエッ
周りには人がいるから口を押さえて声を殺しているけど漏れてしまう。周りも「あいつ大丈夫か!?」と目線を送っていると1人の女性がカロリーナを救出。
股からめっちゃ血がてているし、大浴場の職員は「面倒ごとはやめてくれよ!」と関わりたくなさそう。
カロリーナを助けた女性の名はダウマー。砂糖菓子屋を営んでおり赤ちゃんを養父母に渡す仲介をしているのだそう。貧困者が多い時代ですから子供を授かっても自身では育てることが難しいことも多いためカロリーナのように助けを求める人も多数いる時代。
ダウマーはカロリーナに「生まれて育てられなければ頼ってくれ」と店を教えて別れました。
ダウマーの励ましの甲斐もあってカロリーナはお腹の子を産むことにして、離れた元夫と一緒に生活することを決意します。
少し経って、カロリーナは日雇いのバイトに応募してなんとか生活を続けており、お腹もかなり大きくなってしています。ある日、鉱石の運搬をしていると持ち上げたはずみで産気づいてしまいその場で女の子を出産。
元気で可愛い女の子を出産することができ家に連れて帰ると夫は「誰の子かなんて関係ない。一緒に育てよう」と言ってくれますが、カロリーナは夫との子でないのが引っ掛かり育てるのに前向きになれません。
出産した翌日。夫にバレないように子供を連れ出しダウマーの元を訪れます。
ダウマーはカロリーナを歓迎し、彼女の子供を預かることに。この選択が彼女の今後をかなり変えていきます。我が子ではあるけれども結ばれることのなかった相手との子供だし、自分が生きるのにも精一杯な日々。
カロリーナの“選択”はどんな未来に結びついていくのか…。
同じ境遇の「母」を救うため
前述したように子供を産んだとしても「望んでいなかった」、「生活環境上育てることができない」人たちが数多くおり、ダウマーの元だけでも35人の子供が預けられることになります。
と言っても渡された子供たちは養父母の元に行くのではなく「殺されていた」っていうのが結末なんですが、その動機が結構複雑な感情にしてくる。
生まれてくる子供に罪はありません。養父母に引き取られるのであればそれに越したことはないですし、引取先がなくても孤児院が用意されていたりします。
そういう選択肢があるのも関わらず“殺害”という選択をとっていたわけですよ。
裁判を見に来た聴衆や子供の生みの親なんかは「人殺し!」と非難しますが、表向きでは子供を引き取ることで育てられない母親の苦しみを救済していたと思うんです。やり方は間違ってますけどね。
作中でも「人身売買は犯罪」と言われているように本当はやっちゃダメだとみんな知っているんですが、孤児院に向かわずダウマーの元にやってくるんだから何かしらの出せない理由があるんです。
そういう人たちの窓口となって自身の手を血で染めて結果的には救済していたからなんとも言えない気持ちにさせられる(´ω`)
子供を預ける母親たちの苦悩やカロリーな自身が追い詰められる様子なんかを光の使い方や音響などで表現しており、色がない分そういう顔色や表情の緩急で結構伝わってくる。
顔は真顔で涙を流してはいないんだけど目の中が光っているみたいな感じ( ;∀;)
そこまで大きな動きもないし、派手な音楽もない分見ているこっち側の想像力をかなり駆り立てられる。静寂が続くシーンもあるからこっちも一回考えれる時間ができたと思って自然に整理するんですよ。
なので物語も飲み込めるし感情移入もしやすい。色々と省いてシンプルになっているんだけどその分こっちも考えるから全体をちょうどよく楽しむことができる作品ですね( ^ω^ )
最後に
ジャンルとしては「ホラー・ミステリー」?なんでしょうけど、正直ホラー感はありませんね。ミステリーとしては「カロリーナはそっちだったのか!?」という驚きはあるかもしれないです。
最初予告見た時に「この主人公が何かしらやらかすんだろうな」って思っていましたからw
尺が割と長いんですが、しっかり作品の内容を落とし込める時間もあるし、時代背景や彼女の選択に対して「仕方ないよ、私たちでもそっち選ぶもん」と思えるくらいに必死で生きているのがわかります。
その必死さが伝わるからこそあのラストシーンは良かった!あんなの感動しちゃうよ。そりゃ視界も色付きますわな。
ただ予告やポスターの印象で作品を見ると、内容的にミスリードを狙っているのか!?と感じてしまうかもしれないですね。カロリーナの立ち位置が想定していた場所とは違ったりしますし、ガッツリ殺人事件を解決しに行くミステリー作品かと思ったらそういうのでもないのでね。
そのあたりはギャップがあるので「ミステリーが好きで見た」とかの人の中には「全然合わないな」と肩を落としてしまうかも。そこはちょっと評価落ちちゃいますね。私もどっちかというとそっちだったので…。
ただ歴史を元にした一作としては良かったです。針のように刺さる痛々しい現実の中でもがきながら生きるのって大変ですよね。昔の人にはその時の大変さがあるけど現代も違った大変さがある。 だけど誰もがどこかで報われては欲しいものです(´ω`)シンミリ
ってなわけでまた次回 ´ω`)ノアリャシタ
評価 ☆☆☆★★3/5