ゴーヤの気ままに映画

見たい作品がある時に書いているので定期更新ではありませんが大体月に2,3本は新作鑑賞して投稿しています!文章は苦手なので下手なのはご容赦ください。評価は甘口カレーくらいの甘さ( ^ω^ )

映画『哀れなるものたち』あらすじ・感想・ちょっとネタバレ 人間の全てを知ろう

 

 皆さんは「フランケンシュタイン」って知っていますか?ホラー映画も公開されてきた有名な怪物ですが、フランケンシュタインは複数の遺体を繋げて復活させているのが特徴的。なので体のあちこちがツギハギで縫い目が見えているんですね。

 今作の主人公・ベラはフランケンシュタインのように蘇りはするものの「体は彼女自身のもので脳が孕っていた赤ちゃんの脳に変わる」という設定。

 

 この設定を聞いただけでもかなり変わった作品っぽいですが原作小説は1990年代に書かれており個人的にはそれにも驚き!こういう設定って現代にありそうな内容なのにもう30年前の小説で描かれていたんですね…。

 

 昨年(2023)に第80回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞を獲得し、多くの人が注目することとなったわけですが予告を見ただけでもかなり興味を引く内容!

 ただ原作小説を読んだこともないし、公式HPに登場人物の詳細なんかが記載されていないため映画の情報が比較的に少なく感じます。

 

 脳が子供の成人女性が様々な体験で成長していく姿をどんなふうに描いているのでしょうか!?

 

 さっそくいってみよ〜〜〜٩( ᐛ )و

 

 

作品情報

 1992年に発表されたアラスター・グレイの小説『Poor Thungs(原題)』をもとに製作されたSFラブコメディ映画。日本では2008年に翻訳され、今回の映画化を機に2023年9月26日から早川書房出版で再販されています。

 

 飛び降り自殺をした女性・ベラが天才外科医の手によって蘇生されたが彼女には胎児の脳が移植されていた。世界を自分の目で見たい欲望に駆られた彼女は放蕩者の弁護士・ダンカンと大陸横断の旅に出かけ成長していく。

 

 主人公・ベラを演じるのは『アメイジング・スパイダーマン』(12〜14)シリーズや『ラ・ラ・ランド』(16)でアカデミー主演女優賞を受賞したエマ・ストーン。赤子の脳を移植された女性の辿々しい発言や行動を表現する。

 ベラを旅に連れ出す弁護士・ダンカンはMARVELの“ハルク”で知られるマーク・ラファロが担当、ベラを蘇らせた外科医・ゴドウィンをスパイダーマンシリーズでグリーン・ゴブリンを演じたウィレム・デフォーが演じたりと様々な俳優陣が出演!

 

 今作で監督を務めるのはエマ・ストーンと製作経験のあるヨルゴス・ランティモス。2009年に監督を務めた『籠の中の乙女』で第62回カンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞。

 その後公開された『ロブスター』(15)、『女王陛下のお気に入り』(18)でアカデミー賞、カンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭などの映画祭で多くの功績を残してきました。

 

 近年実力を発揮している天才監督とエマ・ストーンをはじめとした豪華俳優陣で作られる未体験のSFラブコメディはどんな物語を私たちに見せてくれるのか!?

 

 

あらすじ

 天才外科医のバクスターの手によって胎児の脳を移植されたベラは、不幸な死からよみがえる。世界を自分の目で見たいという欲望に駆られたベラは、放蕩者の弁護士・ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。偏見から放たれたベラは、世界を吸収し、成長していく。

 

※引用元:natalie.muより


www.youtube.com

 

 

感想

世界を知らない少女が欲に溺れ、人間の優劣を知り堕ちていく…。誰にも縛られずに色んな国で体験したことから多くを学び大人になっていく。縛りがないからアレもコレも曝け出された強烈な一作!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純粋で良し悪しが分からないからこそ溺れやすい

 飛び降り自殺をした妊婦を「孕った胎児の脳を移植したことで蘇生」させた衝撃の強いコンセプトの作品。こんなパンチの効いた実写映画はなかなかないですよね。

 生き返った後住んでいたロンドンを離れさまざまな国を旅していくわけなんですが、どんな体験をして大人へと成長していくのかが気になりストーリー展開にも期待をしていました。

 

 正直衝撃的でした!(゚∀゚) 作品の制限が「R18+」なのと予告で性的な展開があるとは思っていたけどあんなに曝け出してくるとはww

 

 だってエマ・ストーン演じるベラはTKB見えるし、男のTNPは見えるしバンバンおせっせするしね。ここまでボカシなしに表現されているとは思ってもみなくて最初あたりは目を丸くして唖然としていました。

 ただこのシーンってベラが成長していくのにとても重要なキーポイントになっていて後半になるとより強調されていくんですよね。

 

 目覚めたばかりの時は子供の脳なこともあり歩き方や食事の仕方もわからない。父役であるゴドウィンに懐き純真無垢な子供の顔を見せ日々成長しているが、ゴドウィン自身がずっと彼女を観察することができない。 彼女の成長を見守るためにマックスと出会ったことで心境にも急激な変化が訪れます。

 

 まずやってきたのが“性”への目覚めです。不意に自分の股に触れたことから快楽を知り徐々に歯止めが効かなくなってしまいます。果物や野菜を入れようとしたりマックスの目の前でやり始めようとしたりするんですよね。

 彼が止めてその場は終わりましたが表に出さないだけで興味はかなり持った状態。それを爆発させたのが放蕩者のダンカンでございます(゚ω゚)

 

 マックスとベラの婚姻届を作ったことでバクスター家との関係がスタートしますがこの男がまぁすごい遊び人なわけです。マックスと婚約までしたのにベラに興味を持って2人で旅に出ようなんて提案をするわけですからね。 マーク・ラファロにしては珍しいキャラクターを演じたんじゃないでしょうか。

 

 ゴドウィンには内緒でとダンカンは言いましたが「なぜ内緒じゃないといけないのか」が子供の考えとしてわからないベラは「行きたい」と懇願。

 ただの実験体として見ていたベラのことをいつしか娘としての目線で見ていたことにゴドウィンは気付き始め承諾しちゃうんです。

 

 ゴッド自身もわかってたはずなんですよね。ダンカンが軽い男だってこともマックスが婚約者を他の男と旅行させることに反対することも。

 だけど今まで縛ってきた環境から離れることで彼女の成長につながる経験があると思い送り出します。

 

 ここはゴッドが幼少期に父から受けていた虐待があったのでしょう。受けた本人は虐待というより医者としての探究心だとリスペクトしていたところもあったかもしれません。あるシーンで親指が変形していることに触れますがゴッドは父から実験体として痛い思いをしていたけど笑っていたそう。

 この経験から解剖学やキメラを作り出す研究に身を投じていくことになりますが、ずっと縛られていた自分の姿と重ねて家から出してあげようと思ったのかなと。

 

 父がお金を間接的に渡し送り出してくれ気持ちよく出発できたぞ〜〜〜٩( ᐛ )و カットインが流れ「リスボン」へと移動した瞬間にダンカンとのS◯X!!

 

 おいっ、さっきまでのエモい感じはなんだったんだ!?( ^∀^) 親の監視がと彼ら瞬間に欲に溺れまくってるやないかい。

 彼女の思考の中には「婚約者がいる→他の異性と関係を持ってはいけない」なんて概念は子供なので持っておらずただただ熱烈ジャンプをかますだけ。

 

 食べたいもの食べてやりたいことやってストレスを感じることなく楽しく過ごしていたがダンカンの知り合いと一緒に食事をしたことをきっかけに“社交性”を持つよう注意をされます。彼女の嫌いな“縛り”です。

 こいつも私に指図するのか!顔を平手打ちからのS◯X!!もうこれさえあれば嫌な気持ちも吹き飛ぶからね♪ そんな毎日を過ごしていれば流石のダンカンも休みたくなるもの。

 

 やることがないのとパイを求めて街へ出てみることに。そこには綺麗な景色と美味しい食べ物、酒や綺麗な魚など見たことのないものばかり。中にはポルトガル語でつっかかってくる婦人がいたりと怖い体験もして外の世界を少し知ることができました。

 

 その後ダンカンのサプライズで箱に監禁され気がついたらアテネ行きの船に乗船。同じ船に乗船していたハリーとマーサに出会い人間の考え方や人間の中に存在する優劣を体感する。

 ダンカンは日に日にベラへとのめり込むが彼女は彼に依存することが減って最初に見せていた個性が薄れ真人間へと変化していきます。

 

 そんな彼女の目を覚まさせるためにマーサを海に落とそうと暴れたりしどんどん精神を病み始めます。ベラが依存していたのに立場が真逆になってしまいましたね( ´∀`)

 

 ハリーはベラの希望に満ち満ちた顔を見て「現実」をぶつけようと途中で立ち寄った土地で貧富の差により死見せたところかなり大きなショックを受けてしまい精神を抉られてしまう。彼女自身そんな体験をロンドンに住んでいる時には体感することはなかったのではじめて解剖以外で人の死を見たのではないでしょうか?

 

 その環境を改善するためにダンカンがカジノで買った金をスラムの人へ渡そうとします。ですが船は出航してしまうため乗務員が「私が持って行きますよ」とお金を預けるんです。

 見ているこっちとしては絶対取るとわかっていても目の前しか見えていないベラは疑うこともなくお金を渡してしまい、口座も手持ちもお金がなくなりパリで下船。

 

 ダンカンは一文なしになってしまいこれからどうしようと悩む表情を見せるもベラはそんなこと思っていないからどこか楽しそうな顔をして試しに娼館でお金を稼ぎます。行為もできてお金ももらえるなんて一石二鳥じゃないか!と娼婦にまで落ちてしまう。

 

 なったばかりの段階は何も感じませんが彼女は日が経つにつれ心が「無」になるのを感じていくんです。これが社会。これが女性の立ち位置。体を売らなければ生活することもできない。

 

 そんな変化を遂げたベラに対し、ゴッドはベラがいない生活からもう1人実験体を作り酒に溺れ涙を流す日々。しかも彼の体には腫瘍があり自分の先が短いことを悟りベラへ危篤の手紙を出すことに。

 

 このことをきっかけにベラにさらなる障害が訪れることに…。

 

 

いと哀れなりこいつら

 主人公ベラは上記のように社会を知り落ちていく姿がなんとも哀れですが、彼女だけでなく他のキャラクターたちも哀れ。彼女だけでなく周りの登場人物も哀れな生い立ちだったりします。

 

 ゴッドは幼少期に父から実験体としてさまざまな手術などを受け身体中傷だらけ。街の大人子供は「怪物だっ!」と怖がられて誰も近付かず友人もいないため結構寂しかったと思うんですよ。

 マックスを住み込みのバイトに雇ったことで1人だった食事が団欒の場となったりして人と関わる楽しさをあの歳で初体験したんじゃないですかね。そこまで長い期間が残されていたわけではないでしょうが昔の彼は哀れな幼少期だったのではないでしょうか。

 

 マックスはゴッドに憧れて彼の授業に出席して真面目に受けていたからバイトに誘われてめっちゃ嬉しそう。ベラを観察しているうちに1人の女性として魅力的に見え婚約までしたのに急に出てきた男と旅に出るなんていと哀れ(゚ω゚)

 しかもベラを説得しようとしたけど眠らされてゴッドもベラ側についちゃったから味方がおらず、手紙でしか近況をしれないっていうねw 絶対あの2人やってるよなってゴッドと同意見だし。

 

 そしてダンカンが全体を通してめちゃくちゃ落ちてしまった人物じゃないですかね。

 

 ベラに興味を持って旅に誘い、彼女がのってきたから「略奪愛成功だ!」とか内心思ってたけどベラから「マックスと婚約してるから彼の元には帰る」と言われ、カジノで大勝ちした金を勝手に誰かに渡され無一文。下ろされた先のパリではホームレス状態で着ていた綺麗なスーツは汚れてしまう。

 ベラを落とすつもりが逆に落ちてしまい彼女の魅力から抜け出すことができない。挙句に牢屋へ投獄されてしまい何もかもを失ってしまう。あぁ哀れ(・Д・)

 

 特にマーク・ラファロの表情が追い込まれていくダンカンを上手く演じていてよりかわいそうに見えてくるんです。気付いたら牢屋にいて壁に向かって寝ている背中も小さく見えちゃってね。

 

 まさかみんなここまで落ちていってしまうなんてね。人生何があるかわからないとはいえ色々起き過ぎて大変です!

 

 

最後に

 今作はストーリーやキャラクターが個性的でかなり引き込まれる作品になっていましたが個人的に感動したのは国が変わる時のカットインデザイン。

 

 まずロンドンを出て向かった「リスボン」。カットシーンではベラが大きな魚にまたがっている。これは多くの人がわかったかと思いますがまさに「大海へ出た」ことを意味しているのではないでしょうか。

 ここを境に映像がカラーへと変わりベラの見える世界に色がつき始め違うものに見えてくることを表現していたかと思います。

 

 次は手の中指から親指へと降りていくシーン。ここから見る人で受け取り方が変わってくる内容になっていますが、私個人としては大人の指に歩を進めているので単純に「大人になる」ことを意味し、下っているのは「欲に溺れ落ちていく」意味なのかなと。

 左手の甲側を写していた意図は分かりませんが日本的な目線で言うならば、「左利きの人への人権問題」なんかがあったので海外でももし同じようなことがあるのなら女性蔑視とかけて左手にしたとかですかね?

 

 そして3つ目は泡に包まれ沈んでいくシーン。このカットは確かアレクサンドリアかどこかで子供が死ぬのを見て精神的に落ち込んでしまうのを表していると感じます。泡に包まれているのは逃げ場がないのかなと。

 目を背けたくても写ってしまう現実がそこにはあるわけなので臭いものに蓋ではなく自分の力で乗り越えていくしかないんですよね。最後は泡を割って自分で這い上がるしかない。

 

 4つ目は浮き乗って気のままに運ばれるシーン。ここではパリで娼婦になるベラを描きますが、言われるがまま流されているベラのことかなと。自分の手を使って進む方向を選んでいないのも行為を重ねるうちに感情がなくなって「無」に近づくのを描いていそうです。

 このカットは今までの中で最も落ち込んだところの表現ぽいので背景の殺風景で何もなくほんと寂しい感じ。ここまで落ちちゃったかって雰囲気がすごく出ています。

 

 そして最後、橋を渡るシーン。これはベラ自身が今までの経験と自分がやりたいことを見つけて歩みを進めはじめるところでしょう。これから新しい場所へ渡るってのを表現するのに橋が使われているんじゃないでしょうか。

 ただ明るいことばかりではなくゴッドが癌になってしまっているので服が真っ黒なのも喪服を示唆させにきているんじゃないかなと思います。

 

 これからゴッドが亡くなってしまうことを乗り越えるってのも橋にかけてきてたら結構納得のいく描かれ方じゃないかなと思うんですけどね!皆さんはどう言う視点で見られましたか?

 

 っとかなり長く書いてしまうほど中身の詰まった作品となっていました。上記以外にもまだ書きたいと思いましたがあまり細かく書かずにいろいろな視点で見た方が楽しめる一作に仕上がっていると思います。

 性描写が超ストレートに出てくるんで誰かと見にいくと気まずくなりそうですが多くを考えられるいい作品でしたね。

 

 エマ・ストーンの子供から大人になるまでの仕草や言葉選びもすごく上手くてよりベラの魅力を引き立てていたと思います。製作が「SEARCHLIGHT」なのでどっちかというとインディーズ作品に特化した会社ですがこの作品はその枠には収まらないでしょうね!

 

 ってなわけでまた次回 ´ω`)ノアリャシタ

 評価 ☆☆☆☆★4/5